まつり当日の様子
2月21日:因幡の傘踊り|箱根仙石原湯立獅子舞|銀鏡神楽|能「葵上」|真野音頭|加賀鳶はしご登り|山北棒踊り
2月22日:火伏せの虎舞|隠岐国分寺蓮華会舞|六斎念仏踊り|舞楽 左舞「採桑老」|狂言「菌」|新作能「河勝」|花みこし
第9回 地域伝統芸能まつり テーマ「祈り」
日本各地で受け継がれている地域伝統芸能や古典芸能を紹介している「地域伝統芸能まつり」では9回目を迎える今年も、たくさんのご応募をいただきました。ご応募をいただきました皆様、誠にありがとうございました。 今回のテーマはわたしたちの祖先が天や地に捧げてきた、無病息災や家内安全、五穀豊穣などの様々な「祈り」をテーマに、10の地域伝統芸能と4つの古典芸能を全国から選出し、その歴史や地域性等も併せてご紹介しました。
司会
司会は前回に引き続き地域伝統芸能まつりではお馴染みの女優の竹下景子さんとNHKの水谷彰宏アナウンサーでした。
息もぴったり合った二人が、わかりやすく演目を紹介するとともに、それぞれの演目が終わるごとに出演者に声をかけ、各地で地域伝統を受け継いでいる人々の姿を会場のお客様にうまく伝えていました。
■第1日 2月21日(土)午後2時30分開演
オープニングを飾ったのは豊作を祈り、感謝する行事「一人角力」でした。土俵に上がった力士は行司の差す軍配とかけ声につれて、目に見えない精霊と三本勝負で取り組みます。1勝1敗で迎えた最後の一番、稲の精霊に力士が豪快に“投げ飛ばされ”、めでたくその年の豊年満作が約束され、地域伝統芸能まつりが目出度く開幕しました。
因幡の傘踊り(いなばのかさおどり) 鳥取県鳥取市/国府町因幡の傘踊り保存会
最初の地域伝統芸能演目となるのは鳥取県鳥取市から因幡の傘踊りです。金銀多彩に彩り、100個の子鈴を付けた重さ3キロの傘を絶えず回転させながら、縦横無尽に激しく振り回す、勇壮活発で迫力ある踊りでした。26歳から68歳までの20人の息の合った踊りに会場は大いに沸き上がりました。元々は雨乞いの祈願として始められたものでしたが、今は「願いが叶う」ということで、お祝いの行事で披露することが多くなっているようです。
箱根仙石原湯立獅子舞(はこねせんごくはらゆだてししまい) 神奈川県箱根町/仙石原神楽保存会
地域伝統芸能まつり初登場の神奈川県からは獅子が湯立を行うという珍しい獅子舞が登場しました。保存会長の勝俣さんによると「神楽作法の流出を避けるため、長男に限り継承されてきた」ということで、厳しいきまりの中地元で受け継がれてきた舞に大きな拍手が送られました。また、今回は無病息災を祈願し客席に向けても湯立を行い、観客もともに御利益にあやかりました。
銀鏡神楽(しろみかぐら) 宮崎県西都市/銀鏡神楽保存会
宮崎県西都市の山奥にある銀鏡地区で受け継がれてきた神楽で、めったに地区の外に出ることのない演目です。神楽は33番からなり、毎年12月14日の夕方から15日の翌朝にかけて、夜を徹して舞われます。今回は、そのうち3つの舞を短縮して上演しましたが、舞台セットも本物の杉を使用するなど、まるで現地で観ているような雰囲気を満喫する贅沢な時間となりました。
能「葵上」[喜多流](あおいのうえ) 塩津哲生ほか
室町時代、足利義満が後援した犬王の作と伝えられる曲で、源氏物語の葵ノ巻の世界に誘う能の名作です。葵上の病の原因を探る巫女の呪術に現れた六条御息所の生霊が光源氏への想いを語りました。無意識の内に怨念の生霊となって葵上を苦しめていた六条御息所は、比叡山横川の修験者の祈りに、「ああ恐ろしの般若声やな」と自分を取り戻し苦悩します。恐ろしくも物悲しげな般若の面が心の内を物語りました。
真野音頭(まのおんど) 新潟県佐渡市/民謡研究会 佐渡小波会
踊りが好きな者が家内安全、無病息災を願い、お地蔵さんを背負い夜通し踊り明かしたことがはじめとされる真野音頭。お地蔵さんは最も重いものでは120キロということですが、今回は様々な大きさのお地蔵さんを7歳から80歳の幅広い年齢層の踊り手が演じました。地蔵信仰の厚い佐渡ならではほほえましい踊りに客席からも自然と笑みがこぼれ、温かい拍手が送られました。
加賀鳶はしご登り(かがとびはしごのぼり) 石川県金沢市/加賀とびはしご登り保存会
勇ましい掛け声とともに、高さ6mのはしごの上で様々な演技を披露した加賀鳶はしご登り。実は金沢市消防団1,100人全員が保存会の会員ということですが、今回ははしごに乗り始めて12年という登り手によって約20分間で27種類の演技を披露しました。手に汗握る演技の連続で、1つ1つの演技が成功するたびに会場は大いに沸き上がりました。
山北棒踊り(やまきたぼうおどり) 高知県香南市/山北棒踊り保存会
神奈川県同様に地域伝統芸能まつり初登場の高知県からは電光石火の早業で棒を打ち合う踊り「山北棒踊り」が登場しました。その中でも特に今回注目を集めたのは小学6年生2人の踊りでした。自分の背丈以上にある木棒を軽々扱う彼らの棒さばきは迫力満点であり、大人顔負けの名演技を見せてくれました。終了後のインタビューでは「棒を使って踊ることが格好良くて好き」と、これからの担い手として頼もしいコメントを残してくれました。
■第2日 2月22日(日) 午後2時30分開演
火伏せの虎舞(ひぶせのとらまい) 宮城県加美町/中新田火伏せの虎舞保存会
2日目のオープニングを飾ったのは加美町の火伏せの虎舞です。加美町旧中新田地区は、春先、強風のために大火に見舞われることが度々ありました。約600年前、「雲は龍に従い風は虎に従う」の故事にならい、虎の威を借りて風を鎮め、火伏せを祈願、奉納したのが始まりと伝えられます。今回は9頭の虎が屋根の上に登り舞を披露しましたが、お囃子にのって踊る風情は格別なものでした。
隠岐国分寺蓮華会舞(おきこくぶんじれんげえまい) 島根県隠岐の島町/隠岐国分寺蓮華会舞保存会
隠岐国分寺蓮華会舞は奈良から平安時代にかけて大陸文化が盛んに輸入された頃の芸能です。一度都に入り、宮中や全国の主な寺社で舞われた宮廷舞楽の流れを汲む大変貴重な伝統芸能といえます。平成19年に本堂の大炎上で、面、衣装、舞具全てを失いますが、会員の努力により復元しました。今回は四つの舞を短縮して上演しましたが、会場全体がエキゾチックな雰囲気を共有しました。
六斎念仏踊り(ろくさいねんぶつおどり) 京都府京都市/京都中堂寺六斎会
六斎念仏踊りは、平安時代に空也上人が始めたとされる「踊り念仏」が起源とされ、民衆に仏教を広めるため六斎日に市内を鉦や太鼓を打ちながら念仏を唱え踊ったことが、今に伝えられています。現在いくつかの保存団体が京都の寺社を中心に活動しておりますが、今回は中堂寺六斎会の皆さんに出演してもらいました。後継者も育っているとのことで、今回は93歳の長老とともに3歳、5歳、11歳の幼い3兄弟が達者な演技を披露していました。
舞楽 左舞「採桑老」(さいしょうろう) 復元構成:東儀俊美
舞楽の一人舞で、老人の面をつけ、鳩のついた杖を持った老翁が不老不死の妙薬を求めて、よろよろとさまよい歩く姿を舞うという、様々な伝承に彩られた珍しい秘曲です。雅楽一千年の歴史の中で、いつしか東儀家の舞となり享保16年(1731)以降絶えていたのを、昨年東儀俊美さんが数百年ぶりに復元しました。この不思議な舞に会場全体が魅了されていきました。
狂言「菌」[大蔵流](くさびら) 山本東次郎ほか
家の中に、不気味なキノコが採っても採っても生えてくるので困った男は山伏に調査を依頼します。験力を誇る山伏ですが、祈れば祈るほど人間ほどもあるキノコ、かわいい姫茸などが次から次に増殖し、終いには大きなカサをもつ鬼茸が出現しました。微笑ましいその様子に、観客席が和やかな雰囲気に包まれました。
新作能「河勝」(かわかつ) 作:梅原猛、出演:大槻文蔵、梅若玄祥、茂山千之丞ほか
能の世界を探求する梅原猛さんが書き下ろした渾身の新作で、物語は三部構成になっています。一部では平成の拗ね者が大避神社の怨霊を訪ね、河勝の化身と出会います。二部は大避神社の船渡御の神事です。船には「ひとつもの」という鎮魂の人身御供の童子の姿があります。三部では河勝の怨霊が現れますが、太子の霊に「和を以て貴しとなす」と鎮められ、太子、河勝、拗ね者の三人が一緒に舞を舞います。現代の者が怨霊を見たり、シテ方と狂言方が相舞するなど従来の能の世界とは異なった斬新な作品となっておりました。
花みこし(はなみこし) 岐阜県美濃市/花みこし連
2日間の締めくくりとなったのが、江戸時代の雨乞い行事が起源とされております、岐阜県美濃市の「花みこし」です。この花みこしは一基あたり約10万枚から12万枚の和紙で作った花で飾られていますが、今回は2基の花みこしが舞台を練り歩き、「オイサーオイサー」のかけ声の渦の中でまつりは最高潮に達し、2日間の熱演が締めくくられました。
【地域情報PRコーナー】
ホールホワイエには毎年出演団体の地元自治体の物産展等を設置しておりますが、今回は岐阜県美濃市、鳥取県鳥取市、島根県隠岐の島町の3団体が参加しました。その地域独特のものに興味津々で手にしたお土産と笑顔が来場者と各地域とのつながりを感じさせるものとなりました。
また、今回は出演団体の地元自治体の観光文化パンフレットを来場者配布用として設置しましたが、各パンフレットとも瞬く間になくなっていき、地域情報への着目度の高さを目の当たりにしました。
当日のアンケートに寄せられたご感想
- 知らない日本を知ることができて、本当によかったです。
- 日本古来のもの、もっと多くの人が意味を知り、生活の一部となれば良いなと思います。こういものを見ると、やはり日本が好きになる。ありがとうございました。途中で説明に出てきて下さった方々のお話、興味深かったです。
- 各地域の伝統を受け継ぐ心意気がよく伝わり、素晴しいと思いました。自分が住む地域の伝統芸能をあらためて見直したい気持ちになりました。
- なかなか実際に見る機会がないので、ここで見ることができてよかったです。
- こんなにも多種多様の芸能があるのかと驚きました。
- 日本には、いい地方のものがあるな〜〜と。
- 日本人の心の支えともいえる日本各地に古来から根付いている芸能を生で観賞できることは有難いことです。
- 狂言、能、舞楽とめったに観る事の出来ない演目までありとっても素晴らしかったです。たまたま、地元の伝統芸能を40年振りに見ることができました。いやあ感激です。
- 涙が出て仕方がありませんでした。心にしみた2日間でした。
- 日本の伝統を大切にする人々がこんなに多くいることに感動しました、小さな子供に伝える事も大切ですね。
- めずらしい祭りや(見たことがない又見に出かけられない)なかなか見る機会のない古典芸能を見せていただきありがとうございました。こんな思い出に残る祭りや古典芸能を観せていただき、本当にうれしかったです。
- 伝統文化や芸能を伝える人の心意気や、動きのすばらしさに感動しました。
- どれもすばらしかった。遠方より来たかいがありました。ありがとうございます。