一般社団法人 地域創造

2024年度 「地域の公立文化施設実 態調査」① 全体概要/設置 主体

文化に関わる他の行政分野との連携が大幅に増える

 地域創造では、公立文化施設の整備状況と管理運営の実態を把握するため、財団設立以来、およそ5 年に一度のペースで、「地域の公立文化施設実態調査」を実施してきた(前回は令和元(2019 )年度)。調査対象は、設置主体である地方公共団体および「ホール施設(舞台芸術の公演等を主目的とする『専用ホール』と舞台芸術以外を主目的とする『その他ホール』の2 種に区分)」「美術館」「練習場・創作工房」である。このうち、今号では、2024 年調査の結果から、全体概要と設置主体である地方公共団体の文化行政の動向について、その一部を紹介する。
 なお、前回調査とは回答数(回収率)が異なることを予めお断りしておく。

公立文化施設数

 地方公共団体からの回答に基づく今回調査での公立文化施設の数は、全体で、3,500館となった。1つの館内に複数の文化施設を持つ館があるため、施設数の延べでは3,692館である。施設数の内訳は、専用ホールが1,535、その他ホールが1,340、美術館が651、練習場・創作工房が166となっている[表1]。
 2019年度調査と比較すると、専用ホールでは1,483施設から1,535施設へと増加している一方、その他ホールは1,363施設から1,340施設へと逆に減少。また美術館では、648施設から651施設へと微増に止まった。練習場・創作工房は177施設から166施設へと減少している。上述したように、回収率が異なるためそのまま数値を比較することは困難だが、文化芸術を目的とした施設がやや増加している一方で、それ以外の目的をもつ施設が減少している傾向にある。

 

  • 表1 施設内容別 館数と構成比

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※図表注…小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

 

管理運営形態

 各館の管理運営形態を見ると、指定管理が1, 678 館で全体の48. 0 %を占める(「公募」が29. 4 %、「非公募」が17. 9 %、「PFI 事業者が指定管理者」が0.7%)。直営は1,804館、51.5%である。2019年度調査では、指定管理が1,589館で全体の46.1%、直営が1,843館で53.5%となっており、指定管理館がこの5 年で1.9%増える一方、直営は2.0%減少するという結果になった。指定管理者導入のゆるやかな流れは今も続いている。

 設置主体との関係を見ると、公募の指定管理者を導入している比率が、政令市で60.9%、都道府県で49.3%となっているのに対し、その他の市区町村では24.5%に止まっていることが最大の差となっている[図1]。施設内容別では、指定管理の比率が最も高いのは専用ホールの64.7%で、次いで練習場・創作工房の61.4%が続く。一方、美術館(41.0%)、その他ホール(33.9%)は比較的低い。

 

  • 図1 管理運営形態(%)(設置主体別)

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※図表注…小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

指定管理者の種別

 指定管理者の種別の構成比を見ると、最も多いのは「公益財団法人」の37.0%で、次いで「株式会社、有限会社など(営利法人)」の22.3%、「共同事業体(JV)等のコンソーシアム」の16.0%となっており、他の種別の構成比は1割を切る。前回の2019年度との比較では、「公益財団法人」の比率が前回の38.1%から微減している一方、「株式会社、有限会社など」は21.3%から、「共同事業体等のコンソーシアム」は14.3%からそれぞれ微増している[表2]。

 

  • 表2 指定管理者の種別

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※図表注…小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

文化芸術に係る決算額

文化芸術に係る2023年度の決算額平均についての調査結果は、文化芸術事業費平均59,660千円、文化施設経費平均193,514千円、文化施設建設費平均53,708千円であった。前回調査の2018年度決算額と比較すると、文化施設費平均のみ前回の168,939千円から増額となっているが、他は減少している[表3]。

 

  • 表3 2023年度 文化芸術に係る決算額(団体種別)

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※図表注…小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

文化芸術基本法に基づく連携の強化

 2017年にそれまでの文化芸術基本振興法が現行の文化芸術基本法に改正されたことに伴い、国の政策が、文化芸術を単体で振興することから、他の分野と連携しつつ文化芸術を総合的に推進することに切り替わった。これにより、地方公共団体においても、同様の方向性が求められることとなった。今回調査の結果をみると、こうした「他の行政分野との連携の強化」を既に行っている地方公共団体の割合は全体で29.7%と3割近くに及んでいる。前回の2019年調査の16.2%から、2倍弱と、顕著な伸びとなった。

 種別ごとに見ると、政令市で80.0%、都道府県で76.6%、人口20万人以上の市区町村で60.7%が「行っている」と回答している。市区町村では人口規模が小さくなるにつれ「行っている」比率が顕著に下がっているが、人口1万人未満でも20.4%が「行っている」と答えており、
これは前回の全体平均を上回る。他の行政分野との連携は、全国的に、ある程度の定着を見せつつあると考えられる[図2]。

 

  • 図2 文化に関わる他の行政分野との連携の強化(%)(団体種別)

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※図表注…小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%とはならない。

 

2024年度「地域の公立文化施設実態調査」調査概要

◎調査対象

公立文化施設のうち、「専用ホール」、「その他ホール」、「美術館」、「練習場・創作工房(アーティスト・イン・レジデンス施設を含む)」およびそれらを含む「複合施設」と、施設の設置主体にあたる地方公共団体。


◎調査時期
2024年9月~11月


◎調査方法
全国の地方公共団体の文化行政担当者に、当該団体が設置主体となっている調査対象施設を記入する「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」、「施設調査票」を配布。当該団体において「施設設置一覧記入票」と「地方公共団体向け調査票」の記入および「施設調査票」の各施設への配布と取りまとめをしていただいた。


◎調査回収数
•地方公共団体票の有効回収数
1,756(都道府県47(100%)、政令市20(100%)、市区町村1,687(98.0%)、一部事務組合2)
•地方公共団体からの回答
3,500館 延べ3,692施設(「専用ホール」1,535、「その他ホール」1,340、「美術館」651、「練習場・創作工房」166)
•地方公共団体から回答があった3,500館のうち、施設からの施設調査票の有効回収数
3,478館 延べ3,670施設(「専用ホール」1,523、「その他ホール」1,333、「美術館」648、「練習場・創作工房」166)

調査研究に関する問い合わせ

芸術環境部 中嶋・児島
Tel. 03-5573-4066

 

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