第31号 支えるアート(2011年度3月発行)
特集 支えるアート
アートの可能性が広がり始めている。
介護や福祉、教育といったさまざまな分野で、社会が抱えている課題を克服するために、その力を積極的に利用していこうという動きだ。
表現することは、人間の根源的なエネルギー。
アートを介在させ、人と人が支えあう社会を目指す事例を紹介。
- 香川県高松市│高松市芸術士派遣事業
- 横浜市中区初黄・日ノ出町地区│NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター
- 茨城県桜川市│「桜川芸術祭Ⅲ『晴れどきどき、お散歩アート。』」
- 福島県いわき市│福島県立いわき総合高等学校
- 宮城県気仙沼市│リアス・アーク美術館
空間のエスプリ
体験レッスン
イラストSCOPE
SCOPE
調査研究報告
海外STUDY
特 集 支えるアート
1 香川県高松市│高松市芸術士派遣事業
アートが子どもの未来をつくる「芸術士」のいる保育所
文:山下里加
「核家族や共働きの家庭が増え、なかなか自分が出せない子が多いと感じています。保育の勉強をしてきた私たちではない、芸術士ならではの視点から子どもたちの可能性を引き出してもらうことを期待して受け入れを決めました」(抜粋)
2 横浜市中区初黄・日ノ出町地区│NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター
負の歴史をもつ地域に根づくアートによるまちの再生
文:田中健夫
「当初、アートはまちに安全・安心を根づかせるための一過性のものだと考えていました。しかし、アートは使っても減らない、むしろ、増えていく資源、財産だということがわかってきました。(中略)アートを地域経済の活性化に繋げていきたい。」(抜粋)
3 茨城県桜川市│「桜川芸術祭Ⅲ『晴れどきどき、お散歩アート。』」
“できなくなってはじめてできること”障害者や高齢者に新たな生き方を提示
文:田中健夫
「今や、アーティストがアトリエにこもって創作していればいいという時代ではない。いかに社会や人間と関わり、この時代を生きるか。社会の課題を抱えながら、人とコミュニケートしてアーティスト活動するところにしか、リアリティはありません」(抜粋)
4 福島県いわき市│福島県立いわき総合高等学校
震災後に再び始まった演劇活動表現することが“ちから”に
文:神山典士
「授業に全然ついてこない生徒たちとどこかで真剣に向き合う場が欲しくて、必死で演劇を指導していました。そうすると演劇で生徒たちが明らかに変わっていく。日常生活で起こる悔しい現実を演劇にすることで前向きに向き合えるようになるんです」(抜粋)
5 宮城県気仙沼市│リアス・アーク美術館
津波の記憶を語り継ぐため今こそ文化の力が必要とされている
文:神山典士
「毎年大雪が降る北国に"雪国文化"があるように、三陸にも"津波文化"があるべきなんです。地域に"津波物語"が伝承されていなければいけなかったんです。地域に根ざす美術館は、津波の記憶を語り継ぐ"津波文化"の施設になる使命がある。」(抜粋)
空間のエスプリ
韓国の新たな文化エリアを形成 国際文化都市を目指す仁川広域市
文:木村典子
「仁川はよく横浜と比較されます。地理的環境が似ていますからね。80年代の横浜を思い出してください。誰が今の横浜の姿を想像できたでしょう。時間はかかるでしょうが、仁川も経済と文化芸術が調和する国際都市になると思います。」(抜粋)
体験レッスン
奈良県立図書情報館に殻を破る運営を学ぶ
構成:長野智行
「これから図書館がやるべきことは、一言で言うと"再編集"することだと思っています。本を"再編集"して、いかに発信していくか。ただ単に発信するだけではなく、図書館がメディアとなってさまざまな繋がりを拡げていく」(抜粋)
イラストSCOPE
小学校への稽古も25年あまり継続 八戸えんぶりの変わらぬ“心”を伝える
文:奈良部和美/イラスト:田渕周平
「礼儀を覚え、えんぶり組の方たちと一緒に行動することで子どもたちは目に見えて成長します。伝統芸能に携わる誇りを感じています」(抜粋)
SCOPE
岐阜県北方町 北方町生涯学習センター「きらり」
学んだことを社会に役立てる住民主体のまちづくり
文:土屋典子
「これからは自分が楽しむだけではなく、身につけた力をどうやって社会に還元していくかが重要であり、そこに生涯学習が大きく関わってくる。人のためになることが、幸せ感に繋がると思う。」(抜粋)
北海道札幌市 「おとどけアート:転校生はアーティスト」
授業時間外を使った学校へのアーティスト派遣事業新たなコミュニティづくりにも貢献
文:山下里加
「僕は、ただ"きっかけ"を置いていくだけ。残された人たちが生む何かを期待しているんですよ。『面白かったでしょ?あとはみんなで何かやって』という感じ。これから学校や地域にいる人たちから生まれてくるものが本物だと思うんですよ」(抜粋)
調査研究報告
東日本大震災以降の被災県における
公立文化施設及び文化行政に関する実態調査
2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災が公立文化施設や地方自治体の文化関連の活動に与えた影響を把握するため、特に被災の影響が大きいと考えられる5県(青森、岩手、宮城、福島、茨城)にある公立文化施設および地方自治体に対してアンケート調査を実施しました。(中略)その調査結果の中から震災後の各施設の状況、および震災で明らかになった今後の施設運営の課題に関する回答結果を中心に紹介します。
海外STUDY
ドイツで注目される地方都市 ビーレフェルト市の文化行政
文:山下秋子
「つまり、言葉では表現できないことが造形芸術やダンスなどでは表現できるということ。文化にはまさにこのような力があるからこそ、都市の文化行政は変化する社会の状況に応える先駆的な役割を果たさなければならない」(抜粋)
第31号 支えるアート(2011年度3月発行)
出版物・報告書