御嶽神楽[大分県・豊後大野市]
御嶽神楽は、室町時代に創始されたと伝わっています。江戸時代後期、廃絶の危機を迎えましたが、当時の御嶽神社宮司加藤筑後守長古が新たな神楽を生み出し、これが基となり、幕末から明治にかけて今の御嶽神楽が形成されたと考えられています。戦後、過疎化により保存継承が困難な状況となりましたが、清川村(現豊後大野市清川町)あげての保存運動により息を吹き返しました。現在では、古事記を参考にした神話を主題とする演目を中心に33番にのぼる演目を確実に伝え、大分県南部を中心に伝承される同種神楽の代表的なものとなっています。
新保広大寺節 [新潟県・十日町市]
新保広大寺節は、日本民謡のルーツといわれています。越後瞽女(ごぜ)たちが唄い広め、江戸時代の五大流行唄の筆頭ともいわれています。東北、北海道では、「津軽じょんがら節」、「道南口説(くどき)」などに流れ継がれ、関東方面では「木崎音頭」、「八木節」へと変じていったといわれています。また、西へ向かっては、中部地方の民謡「古代神」の元唄となり、全国各地の「口説」の源流となっています。現在では、新保広大寺節保存会により唄と踊りが伝承されており、地元の下条中学校では、正課の授業に取り入れ、全校生徒が、新保広大寺節を身に着けて卒業しています。
天津司舞[山梨県・甲府市]
「天津司舞」は、甲府市小瀬町に伝わる人形による舞です。地元では「デッツクサン」とも呼んできました。日本最古の人形芝居とも評され、国の重要無形民俗文化財に指定されています。また、人形による田楽は、「天津司舞」が現存する唯一のものです。舞は、神々が湖の上で舞う様子を再現したものと伝えられてきました。御船囲と呼ばれる円形の幕内で、笛と太鼓の囃子に合わせ、からくりを持つ御編木様、御太鼓様、御笛様、御鼓様、御鹿島様、御姫様、鬼様の9体の人形(御神体)が、素朴に、優雅に舞います。
御陣乗太鼓[石川県・輪島市]
御陣乗太鼓は、輪島塗、朝市などで有名な輪島市街地から13kmほど東にある海沿いの名舟町が発祥の地です。太鼓のリズムは、始めはゆっくり、次いでやや早く、最後は最も早く打ち切ります。すなわち、序・破・急の三段で打ち、これを何回も繰り返します。その間、打ち手は自由な形でミエを切りますが、面に応じた身振り、身のこなしなど個性的な芸を入れます。各地の太鼓に比べ、リズム所作等がかもしだす異様な雰囲気には一種独特な迫力があります。また、御陣乗太鼓は打ち手だけのものではなく、名舟町全体のものであることもこの太鼓の特徴です。
勝山左義長ばやし[福井県・勝山市]
小正月の伝統行事の1つが左義長(どんど焼)です。全国的には失われつつありますが、勝山市の左義長は300年以上の歴史を誇り、江戸期から町民が無礼講として自由にふるまえる楽しみと、春を迎える喜びを様々な催しで表現しています。その中で、市街地における12の櫓で演じられる勝山左義長ばやしは、三味線、しの笛、鉦で演奏される明るいお座敷唄に合わせて、浮かれる様に打ち込む「浮き太鼓」が特徴です。そして色とりどりの長襦袢を着用し、太鼓に一人腰かけて音を抑え、笑顔で太鼓を打つこの芸能は全国で勝山左義長だけのものです。
宇原獅子舞[兵庫県・宍粟(しそう)市]
宇原獅子舞は、宍粟市の宇原において播磨伝播により継承されてきた毛獅子で、例年、宇原の天神様と宇原岩田神社に奉納しています。低い姿勢で生きたように舞うのが特徴で、獅子の毛は馬の鬣(たてがみ)を使用しています。演目は、宮入、神楽、曲舞、牡丹、刀、相之山、道引、蝶子、棒、吉野、岡崎、梯子の12種類です。近年、少子高齢化により存続の危機にありましたが、凡そ10年をかけて公平性(地域外からの受入)、ジェンダー(女性の参画)、DX化へ挑戦し、時代に合わせた持続可能な伝統芸能継承に取組んでいます。
阿波おどり[徳島県・徳島市]
阿波おどりは400年を超える歴史を持つといわれる、徳島が世界に誇る伝統芸能です。本場・徳島市では毎年8月11日から15日までの間、国内外から100万人を超える観光客が訪れるなど、日本有数のイベントとなっています。期間中は街中に軽快な音色(ぞめき囃子)と情感あふれる「よしこの」が響き、踊り子や見物客の身も心も弾みます。自由な民衆娯楽として大きく開花した阿波おどりは、東京・高円寺、埼玉・南越谷をはじめ全国各地に根付いたうえ、度々海外公演も開催されるなど、今や世界的にもその名を知られています。